はじめに

file00091462198.jpg昨年の後半から、通勤電車や町中でiPadや他の電子端末を使用して漫画を読んでいる人を目にすることが明らかに多くなってきました。一昨年以来のスマートフォンとタブレットの普及は電子書籍の本格的普及の道を開いたようです。

この電子書籍の普及によって今、私達が親しんできた読書の世界が少しずつ変わりつつあります。この変化は、単に媒体が紙から電子媒体に変わったというだけではありません。記憶に新しいところでは、デジカメと携帯電話搭載カメラの普及は「写真を撮る」という行為を、より日常的で気楽なものに変えました。その過程で既存のカメラメーカー、写真店は構造変化に対応することを迫られました。現在進行中の電子マネーもまた、消費者の利便性を高めた結果、その選択にも影響を与えています。

とりわけ書籍の場合、提供する価値そのものがテキスト情報という形のないものであることから、電子化によって既存の流通網は大きく姿を変えます。また特に我が国においては再販制度という独特の流通保護されてきたものが、媒体の変更と共に適用されなくなります。

また従来は編集・印刷・製本・といった専門性の高い工程を経て作られていたものが、デジタル作業だけで実現可能になることから、出版の敷居が低くなり、個人や企業の情報発信の機会が増えるという側面もあります。

さて長い歴史を持つ本に対して電子書籍は新しい概念のように思われがちですが、見方を変えると意外とそうでもありません。確かに描かれた文字という意味での書物の歴史は古代エジプトのパピルスにまで遡ります。しかし一般大衆の手に渡るようになったのは、実はそれほど昔のことではありません。書物の普及に関するテクノロジーといえば活版印刷術を発明した15世紀のグーテンベルグが有名ですが、普及に関して言えば同時代に活動したイタリアのアルドゥス・マヌティウスの功績が大きいと言われています。

マヌティウスはベネチアの出版者として、古典文学の出版に努めました。初めて書籍にページ番号を用い、イタリック体の元になったフォントを作りました。また重ね合わせた紙の片側を糸などで綴じる「綴じ本」は中世の発明ですが、中世における綴じ本は巨大で、もち運びにも適さないものでした。マヌティウスにより携帯できるほど小型の本が作られたことにより現在我々が親しんだ本の形が完成しました。

そう考えると、書籍というものの普及の鍵は最初から検索性と携帯性であったといえます。この2つの特性を更に強化した電子書籍が登場するのは近代以降の知識の大衆化の当然の流れであったと言えるでしょう。

本日はスマートフォンの普及とAmazon kindleの日本進出を背景に、2012年より本格的普及に向かうとみられる電子書籍の現状を紹介すると共に、その普及が我々の社会と企業活動にどのような影響を与えていくか、またその活用方法を提案いたします。